社長コラム
2018年08月09日 15:44
こんにちわ!今年の5月にマハテイール新政権になり、色々と大きな政策の変更が打ち出され、マレーシア全体が確実に変わり始め、先進国家入りに向けて大きく前進していると感じます。9月1日からの新税制の枠組みも発表されましたので、それらを今回纏めてみました。
1.マハテイール新政権の方向性と政策:
1)財政健全化と公共工事見直し:省庁の統廃合、人材削減等で政府支出を削り、鉄道網等の大型公共投資を見直し経費を大幅に削減し始めています。但し鉄道網の重要性は新政権も認識しておりシンガポールとの新幹線もコストを削減しながら継続する案も浮上して来ています。
2)消費税(GST)の廃止とセールス&サービス税(SST)の導入
一般大衆の重荷となっていた消費税(GST、6%)を6月1日を持って廃止し、8月31日まではTax Holidayとして物品とサービスの消費に関して税金が掛からない時期を設けました。これは効果が大きく、車、電化製品等の耐久消費財の購入が大幅に増えています。
因みに弊社でもこのチャンスに車を購入しましたが、やはり以前に来れば10%以上安く購入出来ました。私個人も新品のゴルフセットを買ってしまいました。Taxi Holidayは8月31日までもう少し継続されますので、マレーシアで大きな買物や豪華な旅行を考えている方はこのチャンスを活用される事お勧めします!
9月1日からはホテル、レストラン、会計事務所等のサービスに対して6%のサービス税が課される様になります。また耐久消費財を中心として物品の製造業者に対してセールス税(5~10%)がスタートします。セールス税の課税対象品目は前の消費税の時に比べ半分以下と言う事、製造業者レベルだけの課税(消費者レベルの課税は無し)、食品等の日常生活用品には課税無しと言う事で、庶民の負担は消費税に比べ大分軽いと思われます。
3)腐敗撲滅、政治と司法の権限分立等
新政権発足後、まず最初に始めたのが国策投資会社(1MDB社)の資金流用疑惑等で前首相のナジブ氏を告訴した事です。マレーシアでは今まで首相が起訴、投獄された事は一度も無く、首相は何をしても司法が手を出せない様な状況がありましたので、今回ナジブ前首相が起訴された事は歴史的出来事であり、政治と司法が明確に分立を始めた証と言えます。8月から公判開始となりますが、ほぼ確実に実刑が確定すると思われます。
またマハテイール政権は腐敗が疑われる大型公共工事を全て見直し、同じく腐敗の疑いのある政府系企業の幹部を例外無く入れ替え始めています。社会全体が腐敗に厳しく、司法の独立、透明性高い政治と経済、マスコミ等言論の自由を認める方向にどんどんと動き出しています。
4)人種(宗教)、年齢を超えた人材登用
新政権で財務大臣に任命されたのは、前ペナン知事のリム グアン エン氏と言う中華系マレーシア人(仏教徒)で、マレーシアではマレー系(イスラム教徒)以外の財務大臣は初めてです。更に司法長官に任命されたトミー トーマス氏は、インド系マレーシア人(クリスチャン)でマレー系(イスラム教)以外の初めての司法長官です。
更に新しく設置された「エネルギー、グリーン テクノロジー、科学、気候変動省」の大臣に任命されたのは、ヨービーイン女史(添付写真)と言う英国ケンブリッジ大学卒の35歳の才媛です。同じく「スポーツ青年省」の大臣に選ばれたのはサイド サデイック氏(添付写真)と言う25歳の秀才です。これらの大臣の選出はマハテイール首相個人によって成されたと言われています。
前与党(バリサナショナル党)の時は、政治や司法の要職は全てマレー系(イスラム教)と言う常識がありましたが、それを完全に覆す人材登用、政治方針になっています。これらの変革は優秀な人材(特に華僑やインド系住民)をマレーシア国内に留め、社会・政治経済の活性化、効率化に大きく貢献すると思います。
5)日本との関係緊密化
マハテイール首相は、1990年代にルックイースト政策(欧米で無く日本や韓国を見習う)を提唱し、大の親日家で知られる政治家です。今年5月に再度首相に任命されて最初に外交訪問した国は日本でした。安部首相に新たな低金利ローンを要請し、日本政府も前向きに検討していると現地新聞等で報道されています。
前ナジブ首相は中国一辺倒の外交路線を進めようとしていたので、外交面でも大きなシフトが起きていると言えます。勿論中国はマレーシアに取り最大の貿易パートナーであり、中国投資の重要性もマハテイール首相は良く認識していますが、同時に日本を含め他の先進国との間でバランスを取ろうとしています。これは正しい政治判断では無いかと思います。日本重視の外交政策で日本からの投資も増えるのでは無いかと期待も出て来ます。
勿論新政権も良い点だけでなく、連合政権であるが故に今の連合体制を長く維持出来るか?次の首相と公認されているアンワール氏とマハテイール氏が今の良い関係を今後も継続出来るか?等の懸念もあります。特にアンワール氏は前マハテイール政権時代に副首相を務めていましたが、同性愛疑惑等で解任された経緯があり、一時は完全に敵対関係になっていたと言う過去もあります。
更に消費税を廃止し、サービス&セールス税に戻して何処まで財源確保を出来るか?財政を本当に均衡させれるか?等の件では新政権の手腕がこれから試される時期に入ります。
7)結論(個人見解):
新政権に対する国民の期待と信頼は高く、新政権には欧米の有名大学を卒業した優秀な人材も豊富におり、新政権の下、民主化と政治・経済の活性化と効率化が大きく進むと考えます。
短期的には大型公共投資の見直し等で一時的に経済が減速するかと思いますが、中長期的にはより成長性が高まると思います。私の著作「日本脱出先候補No.1国 マレーシア」でも書きましたが、マレーシアの天然資源と人的資源はシンガポールのそれを遥かにしのいでおり、政治と政府が効率化すればマレーシアはシンガポール以上の潜在成長力があると言えます。
多民族国家(マレー系、中華系、インド系)、多言語国家(マレー語、英語、中国語、タミール語等)、多宗教国家(イスラム教、仏教、キリスト教等)、英連邦国家と言うマレーシアのユニークな強みにより、中国ともインドとも欧米ともイスラム社会とも、勿論日本とも良好な関係を築いています。この様な国は世界に余り無いと言えます。
今後、マレーシアはシンガポールの様な小国ながら、世界中から注目される国になる予感が強くします。世界銀行も昨年のレポートでもマレーシアの成長力を高く評価し、2023年までには問題無く先進国家入りするであろうと認めています。今後のマレーシア動向は皆さん関心を持って見守る価値があると思います。